第33章 アップルアンドシナモン2
カフェから出た木兎さんは、私を待っててくれていた。
「どした?」
「……っ!」
さっきまで見ていた賑やかな顔に、安心感と他の感情が混ざって思わず涙が出る。
「わからないっ…!」
震えが止まらない。
「昨日まで、全部私のだったの…!
なのに、今日は、違う、全部なくなったの…」
考えがまとまらない。
また疎らな答えしか出ないのに、口をついて出てしまう。
私は、なんて穢いんだろう。
背中に大きな手が回される。
「悪いことして、忘れよう?」
まるで悪魔の囁きだ。
こくこくと頷くしか出来ない。
「…も、やだ……全部、忘れさせて……」
涙がどんどん出てくる。
怖いのに、押し潰されそうなのに。
握ってくれる手は暖かくて逆らえない。