第32章 【ほぼ本編】アップルアンドシナモン
次の日の昼間、1日休みだった。
るるを見送ると、家のことを終わらせて買い出しに出掛けようとした。
そろそろ米が切れるな、と台所を確認して、裏口に止めてあるボロい原チャリに乗ろうとした。
「あ!!いた!!」
「あ!!?」
ヤツはいた……。
「なんでここにいんだよ」
「こっちで暮らしてるって、おばちゃんが」
そういや母ちゃんに口止めするの忘れてたな…と思い出した。
「帰れ。今日は、お前に構う暇はねえよ」
「お休みでしょー!?構ってよ。
ここまで来るの大変なんだし」
「ぜってー、やだ」
メットを付けて鍵を掛ける。
「なけなしのバス賃やるから帰れ」
煙草を買おうと思い、入れていた500円玉を投げてやる。
「ちょっとー!」
って声が聞こえたが無視して出発した。
買い物から帰るとヤツはまだいた。
「おかえりなさーい」
「……警察呼ぶぞ?」
「ちょ、やだー!
中に入れてくれたらすぐ帰るから!」
「ああ!?なんでてめーを入れなきゃいけねーんだよ!!」
「いいじゃん!愛の巣!憧れてるの!
今の彼氏との参考にするから?ね?」
そういうヒト、いるんじゃん……。
余計な一言に思わずイラつく。
「ほらよ、1分したら帰れ」
「お邪魔しまーす」
入れたのがまずかった。
こっちも冷蔵庫に物をしまったり、洗濯したり、結局掃除までしてたらヤツがいたのをすっかり忘れていた。
リビングのテーブルに座って、片付けた後を散らかしながら見ている。
「うっそ、今ゴムこんなの使ってんの?やらしー」
「勝手に見んじゃねえよ、つか、今掃除したんだが」
「ねえねえ、コーヒー頂戴」
「は!!?」
「それ飲んだら帰るわよ」
「クソ……」
ケトルに電源を入れ、丁度俺が飲もうとしてるのを察して言ってるのがわかった。