第32章 【ほぼ本編】アップルアンドシナモン
「たく、なんなんだっつーのアイツ」
「繋心さんのこと、まだ好きなんだと思いますよ」
「何年経ったと思ってんだよ…。
それに、俺は……もう無理だ」
るるがいる、という一言が言えない。
つい照れ隠しで一服しながらテレビに目を流す。
「…そう」
「ああ」
「凄く綺麗な方ですね…」
「ほんと、見た目だけだよな…」
「そんなこと…」
「もうアイツの話は止めろ。
出来ればもう会いたくなかったんだ」
はー、とため息混じりに言うと、白い煙が周りを覆う。
何があったか、忘れようとしてたからただぼんやりとしか覚えていない。
寂しかっただのなんだのと言われ、他に男作ってただか、そんなんだった。
忘れかけていても少なからずトラウマになっているのだろう。
るるが他のヤツといるのを見ると、霧がかかったようにモヤモヤして、近くにいないか探してしまう。
きっとまた鎖で縛り付けてしまう。
及川みたいに、傷跡を残す可能性だってあるだろう。