第31章 【番外編】まだ坂道を登っているようで
私の悩みや、苦しみや、この先生きる希望は、確かに見つけたけど、徹さんはまだ高校生の頃と同じ道で迷子になっていた。
私によく似ていて全然違う境遇。
たくさんのプレッシャーと期待に押し潰されて出来たコンプレックス、まだ、その中をさまよっている。
そんな風に感じた。
(でも、私はもう、徹さんの受け皿にはなってあげられないんだ…)
色素の少し薄い髪を一回だけ、撫でた。
逃げ出したことへの謝罪と、徹さんがいい方向に進めるようにという願いを込めて。
「私も他の人にも会いたいなぁ」
「ダメだ」
「やっぱり女人禁制ですか?」
「目移りされたら…困るだろ…!
今だって、もし戻るって言われたらって、思ってる」
繋心さんはそう言いながら私の目を見ない。
お茶漬けを流し込むと、水!と飲料水を一気に飲んだ。
「そんなこと、あるわけないじゃないですか」
「わーってる…それでも、時々な」
「特に、徹さんに関しては生まれ変わってもないです」
「……お前、及川にだけは、辛辣だよな?」
「次は行きたいです、同窓会かねて」
「ダメだ」
「えー?」