第31章 【番外編】まだ坂道を登っているようで
どうやらこの近くで飲んでた徹さんが、酔った勢いで此方に来たようだった。
「大学生の一学期ってこうだよなー!
ノリで飲まされてよぉー、いい迷惑だっつーの」
「あはは…」
徹さんは私が引くくらいベッタリだった。
「ねえるる、俺たち、やり直せないかな?」
「絶対イヤです」
「そんなこと言わないでさぁー!
皆酷いんだよー!
及川くんはモテるから!
及川くんはすごいから!ってぇ、過大評価だけされてってー!
当の俺はこんな情けないのにぃー!
結婚しよ!重婚でもいい!!」
「絶対イヤです」
「お前が男にそんな冷たいとこ初めて見たわ……」
「普段の徹さん知ってるので本気で気持ち悪いだけですよ。
ほら起きてー」
寝転んで居座ろうとする徹さんを帰らせようと起こすがうんともすんとも言わない。
「あー、ダメですね…お水飲めるー?」
飲料水をコップに注いで飲ませる。
こくこくとリズムいい音が聞こえてきて少し可愛く思えてくる…。
「酔った徹さん少し可愛いですねー?」
「可愛くねえよ、でけえし、邪魔だし」
「徹さん、可愛くないって。
帰りましょー?」
再び起こすと上半身だけ起きて抱きついてくる。
「やだー!!朝まで添い寝してくれたら帰る!!」
「…ざけんなよ!帰れって!!」
繋心もヒートアップしたところで隣の壁がドン!と音が鳴る。
「……さーせん」
繋心さんが1人小声で謝罪をすると、部屋は静まり返った。
「もう諦めましょう?
終電間に合いませんし、この時間だとバスもありませんし、繋心さんも飲んでるから運転出来ませんし…」
「…はぁー!?外に投げ飛ばしとけこんな野郎」
「もう寝息だから大丈夫ですよ」
徹さんは床で既に力尽きていた。
暑そうに着ていた1枚を脱がし、シャツのボタンを外してあげる。
高校の時より男の人に近づいた徹さんの顔は、どこか綺麗で、確かにモテるのはよくわかった。
「ジーパン、苦しくないかな…」
「もう放っとけ。そこまでする義理はねえよ」
「そっか…」
「それよりいつもの茶漬けくれよ、ラーメンの〆でギリギリ留めてんだ」
「はーい」