第28章 【番外編】見せたくないし見られたくないし
購買のアイスを可愛い後輩たちに奢ってあげて、繋心さんが来るのを待った。
私だけはお水を飲んで冷静さを取り戻そうと必死だった。
「こ、これから会うんだよねぇ…どうしよ…」
「先輩!落ち着いて!」
「毎日、会ってる!見てる!」
「そうだよね、そうだよね…!」
うろうろしては、アイスを食べている子達に、
「大丈夫かな!?」
と聞いてしまう。
「先輩!深呼吸!!」
「すーはー」
「落ち着きました!?」
「つかないっ!」
ふるふると首を振って伝える。
「何がだ……」
聞き覚えのある声に振り向くと、
「繋心さん!!」
「じゃ、俺達邪魔なんで、帰りまーす」
「うす!!!」
「したー!!」
「るる先輩、良い一夜を」
口々にそう言う私の心の友たちは、去っていく。
「ま、待って……」
「気遣ってくれたんだろ、いいじゃねえか」
「…!!」
そういう問題じゃない。
まだ心臓が痛いくらいに緊張している。
いつも会っているのはわかってる。
「なんだぁ?そこまで無様な動きはしてなかったろ?」
勿論。
もちろんです、と声が出ない。
コクコクと何十回も頷く。
「おい、マジでどうしたんだ?」
「……か、」
「おう」
「カッコよすぎでした…っ!」
漸く振り絞って出した声。
なんとか伝えたくて目を合わせると、少し困った照れた顔をされる。
今自分がどんな顔してるかわからなくて、慌てて顔を両手で隠す。
「な……!?おい……」
肩を捕まれて逃げようとするのを止められる。
「顔、見せろ」
「むりむりむりっ!!!」
「見せろ」
「や、だって……ひどい顔、してます…」
手をゆっくり外される。
「はは、本当だな。
すぐ、食べちまいたくなる」
耳元で低く、柔らかく言われる。
それだけなのに、私の心臓が、お腹の奥が、繋心さんのカタチを探すかのように疼く…。
「はぁ…もう……」
ため息が出てしまって、また、そわそわした落ち着かない気持ちになっていく。
我慢できなくて、私からぎゅっと首に手を回して抱き付く。
さっきまで、こんなことする自信もなかったのに。
「おい、汗くせーぞ」
「ん、興奮する……」
「ったく…家までモつんかね」