第28章 【番外編】見せたくないし見られたくないし
試合当日、繋心さんと一緒に市の体育館に行った。
「俺に合わせると、早いけどいいか?」
「うん、迷子になっちゃうし…。
あ、烏野の部活の子も誘ってますか?
そしたらその子たちと…」
「俺と行け」
むすっとしながらそう返してもらえた。
「宜しくお願いします」
バスに乗って窓を眺める。
流れる景色は私の知らない場所で、繋心さんがざっくり案内してくれる。
そういうのも、なんだか場所を共有出来るようで嬉しかった。
体育館には、数十人ほど人が集まっており、賑わっているんだなーと思った。
現地で合流予定だったバレー部と会い、席に案内される。
「るるさん楽しみですね!」
「皆は何回か来たの?」
「いや、2回目くらい?」
なんだー、とか笑いながら、始まるのを待つ。
ユニフォーム姿の繋心さんはいつもより引き締まってて、すごく、カッコいい。
いつも一緒にいる人とは思えなくて、まるで、芸能人を見ているみたいだった。
ショーに魅せられているかのように、釘付けで、繋心さんにしか目がいかない。
その洗練された動きが、真剣な顔つきが、私の心をわし掴んで離さない。
心臓がうるさすぎて周りの音が聞こえない。
息も止めて、見つめて、気づいたら顔が真っ赤だった。
「………っ」
ピーっと笛がなると、やっと私の耳に音が戻る…。
私は思わず身体を二つ折りにしてうずくまる。
「るる先輩、具合悪いんですか?」
「……カッコよすぎて…!!!!!」
「あーはいはい」
「ごちそーさまでーす」
「え!?リアクション薄くないですか!?」
「カッコよかったですね!!」
「ひ、日向くん…!」
唯一の味方の日向くんをぎゅっと抱き締める。
「だよね!だよね!!」
「は、はい……」
「どうしよ……帰って顔合わせられるかなあ!?」
「だ、大丈夫かと…」
「家に着く頃にはフツーのオッサンですよ、先輩」
月島くんにクールにそう言われて、やっと冷静になれた。
「そっか、そっか、……はあ、むり……」
フラフラと床に置いた鞄を取ると、立ち上がって席をあとにした。