第28章 【番外編】見せたくないし見られたくないし
バイト先に行くと、終わったるるが出ようとしているところだった。
「お疲れさまでしたー」
誰に対しても語尾にハートを付けて返している。
さっきまでの話が反芻する。
「るるさん…!一緒にかえ……」
同時に出てきた、真面目そうな男。
年はるるより上くらいか。
意図せず睨んでしまう。
「繋心さん!お迎え来てくれたんですか?
嬉しい……」
頬を赤くしてあからさまに嬉しそうに、そして蕩けるように言う。
毎日そんな会話してるのに、相変わらずそういう仕草に慣れないというか、見ててどきっとする。
「お疲れさまでした、また明日」
「そういうわけで…じゃ」
勝ち誇った、とまではいかないが、勝者として、落ち着いた構えで腕を組ませて帰路につく。
(今日は余裕あるじゃん、俺…)
さっきの話もあって、ついついそういうことを考えてしまう。
「お前は相変わらずモテんな」
「モテたことなんてないですよ…」
薄々気付いたが、コイツはめちゃめちゃ他人の好意に疎い。疎すぎる。
さっきの兄ちゃんが若干可哀想にすら感じてくる。
菅原のも恐らく言われるまで気付かなかったんだろう。
(あんなにわかりやすいのに……)
俺も言わなかったら伝わってなかったんだろうか。
コイツにとっては、寄ってくる男=性欲処理、くらいにしか思っていないんだろう。
「面白くねえな…」
「え?」
「お前は俺に嫉妬かしないのかよ。
例えば、風俗に行くとか言っても」
「や、お店はご飯で言うレストランみたいなものですし…」
「……あっそ」
「繋心さん知らなかったんですか…?
結構他の女の子が繋心さん見に体育館来てたりとかしてたんですよー」
「は!?」
どきっとする。
女子高生が俺を見に来る……?
それは、なんというか、男冥利というか、少し嬉しい……。
「あ、嬉しそう…」
「いやいや、ガキだし…」
「もうー…ほら、結構妬いてたんですよ!」
「…っ」
自分から振っておいた話題なのに、恥ずかしくなって固まる。
「でも、カッコいい!とか、すごーい!とか、褒められると、『そうなんです、私の繋心さんめちゃめちゃカッコいいんです!』って、一人一人に自慢したくなっちゃうほどでね、してないけど。
凄く嬉しくて」