第3章 背中と甘酒
「あれからどうなった?」
嶋田がこそっと耳打ちしてきた。
焦りに焦って飲んだもので噎せる。
「何かあるわけねーだろ!」
「しー!」
思わず大声が出てたしなめられる。
んな質問してくるコイツが悪いのに、なんで俺が怒られんだと内心腹を立てた。
「辛抱してるんだ」
「ガキだぞガキ、なんかあるわけねーだろ」
もはや自分に言い聞かせるように呟く。
ビールを空にすると誰かが頼んでくれたのかすぐにおかわりがきた。
昨日食ったからあげが美味かったと店の慣れ親しんだからあげをつまみながら思う。
「本当にそんだけ?」
「あ?」
「いつもよりだらしない顔で店に来てたぞお前」
「……」
どんなに誤魔化しても消えない。
出会ってまだ3日。
なのにどうしてもその暗い瞳に惹かれる。
演技なのか本物なのかわからない余裕と隙。
たまに見せる子供っぽい顔。
放っておけねえし、他のヤツに渡したくもない。
酒が入ってるとはいえ、確実にこれは好意だと思った。
もう一杯きたジョッキを飲み干すと、適当な金を置いて帰ることにした。
「足りなかったらまた今度払うわ、悪いな」
「もう帰るんか?」
「用事が出来た」
拙い言い訳だ。
軽い挨拶だけして足早に来た道を戻った。
夜風がほんのり寒く感じる。