第26章 【番外編】一つの恋の終わり
初夏の日差しが柔らかく沈む。
少し肌寒く感じる頃、後片付けを始めていた。
るるさんが場所を教えるために倉庫まで来てくれる。
「これはどうする?」
「こっちの扉横なんだけど、一回閉めなきゃいけなくて」
「うん」
返事をしながら、言われた通り引き戸をガタガタと言わせながら引いた。
「あ」
「あ?」
ガタっと音がして閉まった。
「この引き戸ね、立て付け悪くて、外からじゃないと開かないの」
「……」
確かに、押しても引いてもうんともすんとも動かない。
「うわ!どうしよ、ごめん!」
「言い忘れてた私が悪いしいいよ、気にしないで!」
るるさんは落ち着いた様子で倉庫内のマットに座った。
「そのうち誰か気付いて助けが来るよ、座って待ってよ」
落ち着いてそう言われると、そっか、と安心して隣に腰かける。
(あれ?まずくない?)
二人きりだ。
急に緊張してくる。
「菅原くんまだ身長伸びてる?すごいねぇ」
ニコニコしながら見上げてくる視線。
(…だめだ、かわいいな…)
落ち着こうとすればするほど、段々と変な高揚がくる。
「前とあんまり変わってない」
「そうかな?前より高い気がした」
「が、学校、どうかな…?」
「うん、進学してよかったな、って。
最近思えるようになったよ」
嬉しそうな顔でそう言う。
「半分、俺が選んだみたいな形だったし、もしイヤだったらどうしようかと思った」
「そんなことないよ…あ!そうだ!
お礼、何がいいか決まった?」
思い出したように両手を鳴らして首を傾げられる。
そういう一つ一つの仕草をじっくり見たいのに、緊張してそれどころじゃない。
「あ、え、っと……本当にないし、あの、俺は、大したことしてないよ。
るるさんのわからないところを手助けしただけ。
それだけで、いいんだ」
「えー?それじゃあ私の気がおさまらないよ!」
「!!」
俺の手をそっと手に取ると、ほんとにない?としつこく聞かれる。
(この状況でこんなんされたら、もう…!)
もう、止められない。
「じゃあ、一個だけ、俺の話聞いて」
「うん」
「るるさんが、烏養コーチのだってのは知ってるし、俺は、だから、それを邪魔するつもりはないんだけど、せめて、聞いて欲しい」