第25章 【番外編】合宿と長い夜
出発準備を整える頃には日付が変わっていた。
懐中電灯でゆっくり最終確認をする。
異常なし。
廊下を戻るとバッタリるるに会った。
「繋心さん!お疲れ様です」
「おつかれ」
借りてた厨房の掃除をしていたらこの時間になったそうだ。
電気ケトルだけは朝も使うからと、インスタントコーヒーを煎れてもらう。
厨房のすぐ裏口に小さな庭がある。
業者が食材を届けるスペースらしいが、ハーブなんかも育ててあって、西洋風の洒落た空間だった。
「あー、楽しかった!
繋心さんと旅行、初めてでしたね!」
「こんなん旅行にすんなや」
ほとんど一緒にいれてないのによく言う。
こっちは毎日ヒヤヒヤで全く落ち着かなかったというのに。
いつもの眩しいくらいの笑顔に頭がじんわり熱くなる。
一緒に暮らしてから、ほぼ毎日シていたのに、合宿中は会話すら儘ならなかった。
久々に会ったような感覚に、懐かしさすら感じた。
「今度はクソガキのお守り無しだ、クソが」
悪態を付きながら空白の時間を埋めるかのように肩を寄せてやる。
華奢な肩に触れるのは3日ぶりか。
手の感覚が違うようにすら感じる。
ふんわり漂う花の香りは同じなのに、使っているシャンプーが違うのか、交ざった匂いが落ち着かない。
落ち着かなすぎて煙草に火を付ける。