第25章 【番外編】合宿と長い夜
順調に最終日を迎え、最後の晩飯はバーベキューを行った。
労り含め、せめてのゴールデンウィークの思い出、という武田先生ならではの気遣いだった。
おおよそ、人生初バーベキューであろうるるははしゃいでいた。
「繋心さん、明日運転なのでフリーですがビールですよぉ」
冷えたものが渡され、お決まりのハート付きで言ってくる。
「おう、先生、ご馳走さま」
「いえいえ、お疲れ様でした」
ひんやりしたパイプ椅子に座って、楽しそうにしているのをぼーっと眺めていた。
1年前までは、普通に笑うことすら敵わなかった生活をしていたというのに、すっかり変わっている。
高く硬い防壁は溶け、演技で見せていた余裕も大分少なくなった。
故に心配な面も勿論ある。
防壁がなくなったのはそれなりに俺にはリスクが高い。
そして、幼い頃に慣れてしまったせいで薄すぎるソレ系に対する危機感。
性欲の塊であるなんとかサークルなんかに入ったら一瞬で食われるだろう。
(酒に一服盛られても文句言わなそうだよな…アイツ)
えー?もっと無理矢理なことありましたけどー?とか言いそうだ…。
(眠ってる間とかむしろ親切ですねー、ってか?)
「いい奥さんになりそうですね」
「ぶっ!!!」
隣にいた先生の一言に噎せる。
変な事考えてたせいか、
「誰の」
と言ってしまう。
武田先生はポカーンとした顔をしていた。
「そんなコト言ってますと、とられますよ」
「……っ…」
気まずくビールをすする。
苦味がますます感じる。