第23章 ひかりはでぐち、でぐちはあなた
計画は完璧だった。
あの人は、いつも車に乗るときいつもと同じ水を飲む。
そこに粉の睡眠薬を溶かして、ラベル部分から上手く注射器で入れる。
テープしてラベルを貼り直せばわからない。
包みは私の指紋が付かないようにだけしてそのへんに適当に捨てておけばいい。
ペットボトルはどうにでもなるだろう。
最悪、疑われるのは私ではなく母だ。
中学生にしてはよく考えたと思う。
あの人はいつものように大量にそれを飲んだ。
半分減っただろうか。
後部座席に乗り、いよいよ私の人生最後のドライブが始まった。
巻き込んでしまったお母さんには申し訳ない。
でも、それでも、私は、この生活を終わらせたかった。
作戦は途中まで大成功だった。
眠ったあの人。
起こすお母さん。
高速上で走り続ける車体。
そのまま止まらない。
何かにぶつかり跳ね上がる車体。
すかさず私は、シートベルトを外した。
身体が浮いた。
走馬灯、だろうか。
本当にゆっくりと自分が飛んでいくのがわかる。
しかも、ちゃんと今までの記憶を辿って。
きっと、楽しかったことも、あったんだろう。
でも、でも、それすら思い出せない。
「さよなら」
最後にお母さんに挨拶だけする。
もう誰にも聞こえてないだろうけど。