第21章 煙の奥
「今日のるる先輩いろっぽかったよなー」
帰り道、謎の野生の勘を発揮した日向が言う。
いつもと変わらない、と短く返事すると、うっそー!と大声で言われる。
何がどうしてそう思ったのかわからないが、落ち着かないやましい気持ちに少しなる。
「お前がそんなこと言うから、今度から顔見ずらいだろう!?」
イライラしてつい口走ってしまった。
「何考えてんだよー」
(最悪だ…)
茶化されるネタを自ら増やしに行ってしまうとは……。
うだうだ言い合いながらコンビニに寄ると、噂のヒトがいた。
限りなく気まずい。
「あれー?」
「先輩!きぐーですねー!」
跳ねながら日向が近づく。
「ぼっ…」
言いかけて、なんで話しかけにくいのかわからなくなり、おずおずと挨拶しに行った。
「……す」
「うん、お疲れ様」
「あれ?コーチと一緒じゃないんですか?」
「ううん、お茶だけ買いにー。外にいるよ」
語尾にハートでも付いているのだろうか。
可愛い声で話す。
さっきの話が頭を反芻してもやもやしてくる。