第1章 あなたには私しか居ないんですよ
朝起きてまず俺は石切丸を尋ねた
「おはよう」
「長谷部か、おはよう」
「早速だが主命を賜ったので石切丸に手助けを頼みたいんだがいいか?」
「主命か、長谷部くんが羨ましいな」
「主と話せてか?」
「僕達は長いこと彼女を見ていないからね」
「主は大変忙しいからな」
「そっか、ところで手助けとは?」
「私が長く生きられる様に祈祷してもらいたいそうだ」
「ながくいきられるように、ね」
「何か不満か?」
「いやなんでもないよ行こうか」
主は俺以外と話さなくていい
誰かと話しているのを想像するだけで吐きそうになる
どうか誰にも穢されないように
「ここに正座すればいいのか?」
祈祷場まで連れてこられ
払いたまえ清めたまえ等と呟きながら
何か道具を左右に振っている
本当にこんな事で祈祷など出来るのだろうか
神が神に頼むなど方腹が痛い
主命で無ければこんなごっこに付き合わずに済んだのに
主はたまに意地悪になるな
「終わったよ」
「助かった、朝から済まなかったな」
「主からのお願いだからね」
「では失礼する」
早く主の元に行かねば
もしも誰かが部屋に入るとまずい
俺と主の秘密がバレてしまう
足速に審神者部屋へと向かった
「主…よかった」
「寂しかったでしょう?」
「長谷部はこう見えて怒っています」
「でも無事に戻ってこれて良かった」
「愛しています」
会えない時間がどれだけ不安だったか
ひとときでも離れたくないのに
全く俺の主は意地悪ですら可愛い
そっと瞳の涙を掬う
「もう一人にさせませんから
安心してください」
「…」
「え?」
「ま…ん……ば」
「何だと」
主が名前を呼んだ
俺ではなく山姥切の名前を
こんなにも愛し合った俺よりも
ただ初期刀として与えられた山姥切を。
いいですよ主
好きなだけ呼べばいい
「お仕置きとして当分こちらには来ません」