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まったりの向こう側

第7章 怪しいお薬





「ナナバ…どうしたんだ一体…」

エルヴィンを見つめるその瞳には、うっすらと涙が浮かんでいる。

「何があった?」

薄く開かれた唇は艶やかに濡れ、浅い呼吸を送り出している。

「風邪か?どこか痛むのか?」

指先で触れる頬は僅かに上気し、ほんのりと赤い。明らかに熱を帯びている。


「…平気、だよ…
 ごめんね、今起きるから…」

「いや、いい。
 そのまま横になっていなさい」


今すぐに先生を呼んでくる、そう言いながら医務室へ向かおうとするエルヴィンをナナバが呼び止めた。


「本当に、だいじょぶ、だから…
 お願い…先生、じゃなくて…
 ハンジ呼んできて……」

「ハンジ?何故?」


病気ではなく、怪我でもない。どこも具合が悪いわけではないとナナバはいう。


「……! まさか!!」


確信はないが、思い当たることがあった。

それは誰もが知る、常日頃ハンジが精を出している研究の類のこと。
最近では『巨人向けの薬でいいものが完成しそうだよ!楽しみにしてて!』そう喜んでいた。


「ナナバ、何を口にした」

「ん、ちょっとだけ…
 一口で飲めるくらい…」

「飲める…液体、薬の類か?」


推測を確信に変えるための質問に、目を伏せ無言で小さく頷くナナバ。
そんな彼女の反応に、エルヴィンの表情は一気に険しくなった。


(何を考えているんだ…!)

人に飲ませるなど、あってはならない。
ましてや、よりによってナナバに飲ませるなど…


「…これは、重大な職務違反に該当する…
 それ相応の罰を……
 最悪、除名、もありえるか…」


脳内の思考が駄々漏れし、次々と不穏な単語が呟かれる。


「いや、まずは薬の詳細を確認せねば…よし」

「ハンジを呼びに行ってくる。
 ナナバ、それまで一人で大丈夫か?」


そう問えば、ナナバは先程と同じく小さく頷く。

そしてひとつ息を吐くと、そっとエルヴィンへと手を伸ばした。




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