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まったりの向こう側

第7章 怪しいお薬





「!! それは…!」


ナナバの一言に、ハンジは頷きかける。


(見たいに決まってるじゃないかぁ~~~!!!)

(そうだよ!その通りだよ!見たい、知りたい、余すことなく記録したい!)

(もうそれこそ飯風呂便所、寝ている時だって張り付いていたい…!)


が、如何せん目の前にある薬は人用ではない。

正直、狙った以外の効果の出現や、無いとは言い切れない副作用の有無など不確定要素が多い。

しかも、そんな物を飲もうというのは兵団内でも古株かつ貴重な人材。何かあっては困る人物の一人。

そんな人相手に、流石のハンジですらその脳内は好奇心以上に不安が大きく占めている。

故に…
今回ばかりは躊躇せずにいられなかったのだ。


「ぐぬぬ……」

「今回は随分と我慢強いね」

「当たり前、だろう…
 君に何かあってからじゃ…」


そうは言いながらも、ハンジは小瓶を見つめたまま微動だにしない。
彼女の欲が、ちらちらと顔を覗かせ始めている証拠だ。

(もう少し、かな…?)

そしてそんな彼女の欲を引きずり出す為、ナナバはさらに刺激する。


「薬が切れるまで記録をとってくれて構わないよ。事細かにね」

「あぁ、もう…!君って案外小賢しいっていうか何ていうか!」

「底意地が悪い?」

「そうだね!
 そうとも言うかな!?」


もうヤケクソである。

興奮のあまり真っ白に曇った眼鏡もそのままに、ハンジは小瓶を握り締めた。


(眼鏡、見えてるんだ…スゴいな)

「ナナバ!何かあったらすぐに言うんだよ!
 いい!?」

「了解したよ」


ぽんっと小気味よい音とともにコルク栓が抜かれ、茶色の小瓶はハンジの手からナナバの手へ。

ナナバは受け取ったそれを目の高さまで持ち上げる。
窓から射し込む西日のお陰か、照らされた厚手の硝子越しに、液体が揺れているのが見てとれた。

そうやって暫く眺めれば、今度は片目を瞑り瓶の口から覗きこむ。中身はどうやら無色透明のようだ。

と、同時に、甘く温かな空気が鼻孔を満たした。


「ん…美味しそうな匂い」

「せっかくだからね!
 飲みやすくしてみたよ!?」

「はは、それは至れり尽くせりだ」



ナナバは一つ微笑むと、小瓶を満たす液体を一気に煽った。



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