第7章 怪しいお薬
「ナナバ…本当に飲むのかい?」
「うん。だっておかしなものは入っていないんだろう?」
「それはそうだけど……」
ハンジとナナバ。
二人の横顔を橙色に照らすのは、開け放たれた窓の外で徐々に顔を隠しつつある太陽。
時折見かける団員は、誰もが一日の疲れを抱え明日への休息を無意識に求める…
そんな時刻に差し掛かった頃。
ハンジの執務室にて、二人は真剣な眼差しで小さな茶色の瓶を見つめていた。
「この薬があれば、きっと言える」
「そう、だね…」
「だから」
「でもさ!無理して言う必要もないと思うんだよね!それにほら、これ、人用じゃないしさ?」
「……」
「ねぇ、ナナバ…エルヴィンはその事に関して不満なんて口にしてないんだろう?」
そう指摘されナナバは思い返す。
確かに、エルヴィンは"その事"に関して不満など一言も漏らしてはいない。
当然態度にも出していない。
それはすなわち現状に満足している、ということに他ならない。
(………)
ナナバがきつく目を閉じれば、昼間目にした光景が鮮明に写し出される。
抗おうと構えることすら許されない…
思い出せば、一瞬にして思考の全てが持っていかれそうになる…そんな光景。
(…っ……だめだ、今は考えるな)
先ずは目当てのものを口にしなくては。
そう思えば、誘うような笑みと共にハンジの欲を刺激してやる。
「人に使ったらどうなるか、見てみたくない?」