第6章 0630
あ、帰ってきた。
遠くからでもすぐに見つけられるよ?
エルヴィンは背が高いし、なによりあの髪…本当に綺麗だ。だから目立つのは当然で。
『それだけではないだろうがな』そう言ってたのはミケ。私がずっと探してるから、だからわかるんだろう、って。
…気付いたら、思いっきり手の甲を捻ってた。カリンに悪いことしちゃったな。
「ナナバ、すまない」
「お帰り。
大丈夫だってば、そんなに謝らないで」
エルヴィン気にしすぎ。本当に優しいよね。
「買い物終わった?」
「あぁ、無事に」
そっか、よかった。
ずいぶん大きな袋だけど重くはないみたい。
何にせよエルヴィンが満足できたならそれでいい。
って、ケーキも紅茶も終わっちゃってる。
もう今日は、これで…
「今夜、私の部屋に来てもらえないか」
「ひゃ!?」
いきなり耳元で喋らないで!
エルヴィンの声って心臓に悪いんだよ?
勿論、いい意味で、だけど。
それにしても、何?
夜、部屋に来いって…
「それは…、つまり…」
もごもご喋るなって、誰かに怒られそう。
だけど…
仕方ないんだってば!
だって、こんな真昼間に、こんな人の多い場所で、アレの話なんて…
「鍵、持っているね?」
「うん…」
これ、いつだったかもこんな風に話したことがあった。逆らえないんだ。
…逆らうつもりなんてないけど。
嬉しい。
エルヴィンに『君が欲しい』そう言われると、すごく嬉しい。
私でいいんだって、安心させてくれるから。
…それ以上に、恥ずかしくもあるんだけどね。
中々慣れないんだよ。
「ふぅ…」
「無理はしなくていい。渡したいものがあるんだ、だから他の場所でも構わないよ」
え、勘違い…なの?
「あ、あはは、そっか」
「ナナバ?」
「大丈夫、ちゃんと行くよ。うん」
またもごもご喋っちゃった。
それに、すっごくほっぺ熱いなー…
ほんと恥ずかしい…
「…ふ。そうやって真っ赤な顔をする。
本当に可愛いね」
「ぅ…」
「君に渡したいものがある。まぁ…それだけで終われそうにないのは、君の想像通りだよ」
!?
あぁ、もう、やっぱり恥ずかしい…!!!