第6章 0630
エルヴィンが言ってた喫茶店にきた。
目の前には、小さくて可愛いケーキが二つ。
エルヴィンと私の分。
「可愛い」
「これは…。君がいてくれてよかった」
小さなチョコレートケーキの上にはチョコレートでできた大きなリボン。
その手前には砂糖菓子かな、小鳥とお花が沢山ちりばめられてる。
ほんとうに可愛い。
食べちゃわないで、ずっと見ていたいくらい。
「崩すのが勿体無いな」
「そうだね。すごく手がこんでるよコレ」
可愛いケーキと温かい紅茶。
紅茶は、いつだったか私が美味しいって言った銘柄だね。
どっちも私の好みにあわせたチョイス。
きっと私の為でしょ?
最近、そんな風に思うことが多くなったんだ。
だって、少しでも凹みそうになると決まって声を掛けてくれるから。
それだけじゃない。
こうやって誘ってくれたり、黙って抱きしめてくれたり、いつも私が欲しいものをくれる。
私は、恵まれている。
エルヴィンがいてくれるから。
「ん、美味しい」
「あぁ。これは、何度でも食べたくなるね」
ほら、また。
「ナナバ、また付き合ってくれるかい?」
次の約束。
私もだよ。またエルヴィンと来たいなって、そう思ってた。
エルヴィンもそう思ってるって、私の勘違いじゃないよね…?
「うん。それじゃ、次は珈琲と一緒にいただこうかな」
「それもいいね。楽しみが増えたお陰で、また明日から頑張れる」
「エルヴィンはもう少し休む!」
「はは、叱られてしまったな。…と」
ん?
席を立って、どうかした…?
「すまない、少し買い物の用があったのを思い出した。行ってきても構わないかな?」
「わかった。待ってる」
「ありがとう。本当にすまないね、こんな時に中座するなんて」
「気にしないで。
いってらっしゃい、エルヴィン」
頷き、軽く手を振りながらエルヴィンは人混みの中へ。
心配しないで。
こうして待つのも、案外楽しいんだよ?
だって、エルヴィンが戻ってきてくれるから。
私のところへ、ね。