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まったりの向こう側

第6章 0630


「こんにちは」

そう声を掛けながら入ったお店の中は、色も大きさもいろいろなテディベア達で溢れかえってる。
今日も賑やかだね。



「あぁ、いらっしゃい。また来てくれたんだね」



「ごめんなさい、見るだけなのに」



「いや、そうやって会いに来てくれるのが嬉しいんだよ。みんなね」



そう言ったこの人は、ここの店主さん。
ここにいる子達はみんな、店主さんが作ったんだって。



「あぁ、これは…。いらっしゃいませ」



「こんにちは。お邪魔するよ」



「えぇ、どうぞごゆっくり」



店主さんは読みかけの本を開く。
きっとお客さんに気を使わせない為だと思う。
お陰で、ゆっくりできるよ。



「君好みの熊、か。どんな色かな?」



「ちょっと待ってて」



ここにいる子達には、定位置がないみたい。
時々いる場所が変わるんだ。

だからこうして、
来る度に探さなくちゃいけないんだけど…



でも、それも楽しい。
見つけた時、すごく嬉しいから。



「…あれ?」



いない……



「…あの」



「……」



「もしかして、お家決まった…?」



「…お陰さまでね」



「!!」



そっか…
そうだよね。

あの子はとても可愛かったし、何よりそのために生まれてきたんだから。



「とても優しい女の子でね。ずっとずっと大事にしてくれる、そんな予感がするよ」



「そっか!よかった、うん」



「ナナバ…」



「エルヴィン、行こう。お邪魔しました!」



無理矢理にエルヴィンの手を引いてお店を出る。
ごめん、せっかく来てくれたのに…



それから、もう暫くここには来ないかな。
だってあの子がいないんじゃ…



ダメだ、お祝いしなくちゃ。



大事にしてもらうんだよ…!




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