第6章 0630
久々に二人きりの外出だ。
ナナバは何が気になっているのだろう。
"子"、とは誰なのだろうか…?
「あ、あそこ」
そういって指差した先は、とても控えめな佇まいの店。
「その…、私には似合わないんだ、だから」
そう言って、君は少し俯いた。
「何も心配はいらないよ。さ、行こう?」
「…ん、ありがと」
頬を撫でながらそう伝えれば、
安心したように微笑み、小さく頷く。
「何処にいるかな…」
近づいた店先。
小さな出窓には、レースのカーテン越しに背を向け並んで座るぬいぐるみ達。
これは、熊…?
どうやらテディベアのようだ。
「あの、エルヴィン…」
「気になっている"子"が、ここにいるんだね」
窓越しにぬいぐるみを見つめながら、小さく『うん』とだけ答える。
おや…耳が赤くなっている。
恥ずかしいのかい?
それとも、喜んでいるのかな?
なんて可愛らしいのか。
そんな君と、熊のぬいぐるみ
似合わないわけがないのに。
「どの子だろう…私に紹介してくれるかな?」
「うん!」
あぁ、その笑顔…
何よりの癒しになる。
よく言うだろう?
天使のほほえみだとか、女神の微笑だとか。
それは、今、私の目の前に。
そんな笑顔を向けてくれる君に導かれ、店の扉を潜る。
君が気になる"子"に挨拶をしよう。
また一つ、君のことを知る為に。