第6章 0630
「ナナバ、誕生日には何が欲しい?」
そうストレートに聞かれて、一瞬言葉が詰まった。
「特にない、かな」
本当は、言われた瞬間に思い浮かんだんだけど…
笑顔で否定した。
ばれないように『ない』を少しだけ強調して。
「……そうか」
うまく誤魔化せた?
だってあんな…私には似合わないから。
それに、忙しいエルヴィンに気を使わせたくなかったからね。
「嘘はよくないな」
「っ!」
「それから、遠慮もなしだ」
あぁ、やっぱり…
エルヴィンには敵わない。
「何を思い浮かべたのかな?」
「……」
「すまない、無理に聞き出そうとしたね。忘れてくれ」
「違う、違うよ…」
言っていいかな、いいよね?
エルヴィン、呆れたりしないよね…?
大丈夫。
今まだってそうだった。
エルヴィンを、信じよう。
「あの、ちょっと気になっているものが、ううん違う」
「ん?」
「気になっている"子"がいて」
「"子"?犬か、いや、猫…?どちらもいるな。もっと違う…ウサギ?アヒル?モルモット?」
あ、エルヴィン考え込んじゃった。
「…今度、一緒に来てくれる?」
「あぁ、勿論。楽しみにしているよ」
ちょっと、ううんだいぶ恥ずかしいけど…
でもきっと、エルヴィンに会えばあの子も喜んでくれるはず。
そう考えると…
ふふ、楽しみだな。