第1章 君の初めてで慰めて
その部屋も例に漏れず、最高級の設えであった。しかし、今まで見てきたような派手さはない。
シンプルながらも洗練された室内、この部屋を今夜選んだであろう人物のセンスの良さを感じさせる。
だが、ここに至ってはナナバがそれを気にすることはなく、ただただその身を固くしていた。
「ナナバ…」
エルヴィンに背中から抱きしめられ、耳元で吐息混じりに呼ばれればナナバの肩は小さく跳ねる。
「あの、団長っ、本当に…」
「私を慰めてくれるんだろう?それとも…嫌、なのかい?」
言いながら、ゆっくりと、その形を確かめるようにエルヴィンの舌がナナバの耳を這う。
耳朶から全体を往復すると、優しく吸いながら口に含んだ。
「っ!」
「…ん。柔らかいな」
ナナバの腰を片腕で抱きしめ、もう一方では脇腹を何度も撫で擦る。
「あ…、あの…」
「どうした?もしかして…くすぐったい?」
そう耳元で問いながらも、止めるそぶりなど微塵も見せずにエルヴィンは尚も撫で摩る。
「ちょ、待って、…ん、ん、待って、ください…っ!」
(もうそんな声で…)
エルヴィンの手がさらに数度行き来したかと思えば、とうとうシャツとズボンの隙間に指先を滑り込ませた。
まだ届いてはいない。だが確実に、ナナバの"直"に触れようとしている。
「そろそろ、脱がせてもいいかな…?」
「え、いや、なんというか」
普段の涼やかな印象とは真逆にナナバは言い淀む。と、エルヴィンの腕に添えていた手に、これ以上進ませまいと僅かに力を込めた。
「…成る程。つまり自分で脱ぐ、と」
「違います!何でそうなるんですか…!」
ナナバの気が逸れた一瞬、エルヴィンがそのままぐっと手を差し込めばようやっと下着に触れた。
さらに手を押し込めれば、指先が下着と素肌の境目に届く。
「あ、もう、ちょっと!ダメですってば!ほら、私ってこんなで、男みたい?だから、きっと面白くないですよ。胸もないしっ!」
「おかしなことを言うんだな」
くっ、とエルヴィンは軽く喉を鳴らすと肩口に顔を埋め、そのままそっと首筋を唇で撫でる。
『ぁ』と小さく呟いたナナバの背は僅かに弓なりに反り、まるで誘うように腰が揺れた。
「…ほら。君は十分、"魅力的な女性"だよ?」
エルヴィンが耳に吹き込むようにそう告げた瞬間、ナナバの全身から力が抜けていく。