第1章 君の初めてで慰めて
ホテルはその外観に負けず劣らず、いやむしろ内装はさらに豪奢と言っても過言ではなかった。
「はぁ…、凄い…」
またしてもナナバはその華やかさに圧倒されていた。
いつの間にやらまたもエルヴィンに手を引かれる形で、天井から床まで、あちこちを興味深げに観察している。
(あぁ、また…まるで子供だな。可愛らしい)
そんな彼女の手を離さず、手早くチェックインを済ませるエルヴィン。
握る手に軽く力を入れれば、ナナバはゆっくりと振り返る。
「ナナバ。ほら、行くよ」
エルヴィンは右手に持つルームキーを顔の高さまで上げると、軽く揺らして見せた。
「…っ!えっと、その」
「あぁ…、これがいけないのかな?」
そう言ったかと思えば握る手を解き、さり気なく、だが逃がす間を与えずに彼女の腰に腕を回す。
「さ、おいで」
コンシェルジュがいるというのに、エルヴィンは気にするそぶりもない。
ナナバに至っては、コンシェルジュの存在を気にする余裕がない。
そんな対照的な二人。
だが、並んで歩き出せばその歩調はぴたりと合わさる。
…これから過ごすであろう、濃密な時間が待つ、その場所へ向かって。