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まったりの向こう側

第5章 check the answer



「帰る」


「待ちなさい。まだ答えを聞いていない」


「それは、命令ですか?」



そうだ

その一言で、エルヴィンが望むがまま。
ナナバは振り返り、そして、答えを与えてくれるだろう。



「違う」

「"お願い"だ。
 …恋人の君にしかできない"お願い"だよ」


まるで赦しを乞うように。


ナナバは変わらず背を向けたままだが、エルヴィンの声音に息を詰まらせたのがわかった。



「決してふざけているわけじゃない。
 ……お願いだ、聞かせてくれないか?」



エルヴィンが一歩近づく。

強張る肩を指先で軽く撫でれば、そのまま後ろから抱きしめた。
まるで壊れ物に触れるかのように、優しく、柔らかく。



「……っ、それは、する必要がない、から」


「どうして?」


「だって、支えるものが、ないし…」



…確かに、ない。

だが、だからと言ってする必要がない、というのはいささか乱暴ではなかろうか。



「あまりよろしくないな、それは。やはり無防備すぎる」


「でも、ほら、つるっつるだし!今までそれできて慣れてるからね!」



エルヴィンを安心させる為か、はたまた盛大な自虐か。

早朝の静けさとは不釣り合いな明るい声と共に、ナナバはエルヴィンの手をとった。
そしてそのまま、自身の胸へと引き寄せる。



「はぁ……。そういう問題じゃない」



幸か不幸か、触ってはいけないと言われたナナバの胸に導かれた大きな手。


「……?!」

「んっ!ちょっと待って…
 そんな、触り方…!」



しかし、待てと言われて素直に待つのは…

(勿体ないな)

当然、エルヴィンはこれ幸いとばかりに撫でていく。




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