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まったりの向こう側

第2章 Please give me...


昨日ぶりに帰る自室へ、足取りは自然と早まる。

見えてきた扉はほんの少し開いていた。

まるでエルヴィンを待ち望んでいたかのように。





「ナナバ!ただいま!」

「?!」


およそエルヴィンとは思えない"元気いっぱい"な声に驚き、ナナバは抱えていたシーツを落としそうになる。


「びっくりした…。おかえり、エルヴィン」

「あぁ、ただいま」

「あのこれ、洗濯しちゃったけど…大丈夫だった?」

そう言っては抱えていたシーツを広げて見せる。

「あぁ。ありがとう、助かるよ」





ナナバはベッドへと向き直り、エルヴィンもまたクローゼットへと向かう。


「まだ早い…、また戻る?」


ベッドメイキングをしながら、背後に立つエルヴィンへと尋ねた。

その声は、心なしか沈んでいるようにも聞こえて…

そんな彼女へ、エルヴィンはジャケットを脱ぎながら努めて明るい声で答える。まるで安心させるかのように。


「いや大丈夫だ。もう全部終わったよ。何しろ、朝から目一杯こなしたからね」


そうすれば、その分早く帰ってこられるから。
そう言いながら、振り返ったナナバを抱きすくめ、その首筋に顔を埋める。


…ちゅ


「ぁ…、まって、エルヴィン」

「だめだ、すぐにご褒美をもらわなくては」

「ちょ、何言ってるの!もうあげた…!」

「いいや、まだだ」


まだ!?まだって何!?とナナバは驚き固まる。
その姿に、ほんの少し意地悪そうに口角をあげるエルヴィン。


「あの時、なんと言ったか覚えているかい?」

「頑張ってるエルヴィンへの、ご褒美…」

「そう」


だったら、間違いなくあげている。

一つは、一緒に眠ること。

もう一つは…


「…っ!あれ、あれは…!」


ナナバが何を言いたいのかはわかる。
だが、それで満足してやれる程、物わかりのいい人になるつもりはない。


「そう…、あれは"普段"頑張っている私へのご褒美だ」

「…はい?」

「今からは、出張分だよ」

「なっ!?」




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