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まったりの向こう側

第2章 Please give me...


「エルヴィン?」

「あぁ、いや…すまない。少々驚いてしまって」


何に驚いているのか?
ナナバが思い当たることと言えば、こうして部屋を使ったことくらいだ。

「ごめん、勝手に」

「違うよ、驚いているのはそこじゃない」


不安そうにシーツを握るナナバの手を解き、そっと指を絡める。

「それに…勝手じゃないだろう?私が使っていいと言ったんだ」

「ん」

ナナバは小さく頷く。

「よしよし、素直でよろしい」
「その……、まさか君に会えるなんて思っていなかったんだ。だから驚いた」

時間も時間だ。間違いなく寝ていると、エルヴィンは思っていた。
いや、誰だってそう思って当然だろう。

だがしかし、実際には今目の前にナナバがいる。
ベッドの中、二人寄り添っている。

…しかも、自分の部屋でなんて。

これはまるで、何かのご褒美ではないだろうか?
エルヴィンがそう錯覚したとしても不思議ではないシチュエーション。


(ご褒美…そうか…)


「ナナバ」

「ん、何?」

「君から見て…普段の私は頑張っているかな?」


脈絡のない質問。
だが、ナナバは即答する。

「うん、勿論。いつもありがとう」

そう言っては何かを思いだすように強く目を瞑る。

「…ごめん、役に立てなくて。もっといろいろできたらいいんだけど」


ナナバの脳裏には、いつも忙しそうにしているエルヴィンの姿。
実際その通りであり、朝早く、夜遅い。そして休日を潰してでも仕事を優先することも少なくない。


「何を言うんだ。君こそよくやってくれているよ」

ありがとう。今度はそうエルヴィンが即答する。



「しかし、そうか…。よかった」

「どうしたの、本当に。何かあった?どこか具合でも悪いんじゃ…あ」

「…?」

「だから早く帰ってきたの?」

「あぁいや、それは」

そう言いかけたエルヴィンを制し、ナナバは上半身を起こす。

「ごめん。すぐ帰るから」


(疲れてるんだから、ゆっくり休ませてあげなきゃ)


そう思っているのはナナバだけ。


(嫌なのか?私と一緒は…)


気を使われているエルヴィンは、いささかのショックと共に、何とか目の前の彼女を引き留めようと咄嗟に抱き寄せる。



「んっ…、どうしたの?本当に」

「いかないでくれ…」




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