• テキストサイズ

まったりの向こう側

第2章 Please give me...






男子棟、最上階。

角部屋の、扉前。

古兵の彼女は、些か…迷っていた。










(これ、ホントにいいのかな…)



ナナバの手のひらに乗っているのは、先程も持っていた小さな鍵。



『いない間、私の部屋は好きに使ってくれていいからね』

『いや、居ても居なくても、だな』

『あぁ、それから…、鍵は返さなくていい。
 …君の分だ』



出かける日の朝、そう言ってエルヴィンがナナバに手渡したもの。



(いいような、悪いような…)



ちらと見た先は、鍵穴。

それは何も言わず、ただただ静かに、片割れを待ち続けている。



(………はぁ。やっぱり帰ろう、かな)



だが、エルヴィンの自室、プライベートな空間に興味が無いわけではない。



(まだ帰って来ないし、今日だけ…)



(うん……、今日だけ、だから)



そう思えば、そろそろと鍵穴に挿し込んでいく。



(あ、勿論、世間一般で言う"悪い事"なんてしないし!)



ナナバは今まさに、世間一般で言う"大胆な事"をしようとしているのだが…

それには気付かず、自分の恥ずかしさを自分で誤魔化すので精一杯。





鍵を差し込み

息を詰め

ゆっくりとまわす





小さくカチリと音がすれば、目の前の扉は何の抵抗もなくナナバを室内へと招き入れた。





/ 195ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp