第1章 君の初めてで慰めて
「おはよう、ナナバ」
「…ん、おはよう、エルヴィン…」
寝ぼけ眼を擦りながら、舌足らずな声で名前を呼ばれる。肩を撫でてやれば、寝起きのせいか体温が高い。
なんとも、無防備な姿。
「だめだ」
「……え?」
「欲しい…」
指の背でナナバの頬を撫でながら、エルヴィンの瞳には妖しげな光が宿る。
「我慢できない…、今すぐ欲しい。繋がりたい。しよう」
エルヴィンは一切の隙を与えず、ナナバを組み伏せる。
流石のことにナナバも一気に覚醒した。
「へっ!?ちょ、ちょっと!何!?」
「大丈夫だ、まだチェックアウトまで時間はある。それに」
「君も私も、今日は一日、休みにしてあるからね。なんなら…もう一泊、していくかい?」
そう言う間も、エルヴィンはナナバの全身を余すことなく撫でていく。
「休みって、…んっ、私、何もしてないけど…、あ、んん!」
「あぁ、私が代わりに届けを出しておいた。気が利くだろう?」
「え、ちょっと待って…何を、言ってるのか…」
「団長として、実に有意義に権限を行使したと思っているよ」
「…!?それ、職権乱用!!!ダメ!」
「そんなに帰りたいのか…。あぁ、わかった。私の部屋でしたいんだね?」
「違いますっ!!!」
「よしよし、それじゃすぐに帰ろう。楽しみだな、私のベッドに君がいるなんて…。想像しただけで…」
「腰を押し当てないで!着替えたらすぐ帰ります!でもしません!」
「…明日のお楽しみか」
「あぁぁぁ、もう!違う!」
「ふむ、これは…いつも以上に真面目に仕事をしないとな。終わればきっと、開放感からもっと濃厚に君を抱ける」
「のっ!?何、言ってるの…、…変態なの?」
さすがのナナバもぐったりしてきた。
何しろ、何を言ってもエルヴィンの良いように解釈される。
策士なのか、天然なのか…どちらにせよ、勝てそうにない。