第1章 君の初めてで慰めて
とんでもない人に捕まったのでは…?
そうは思うものの、既にひとつの確信がそれを上回る。
…離れられない。
彼から、離れられない。
そう…、もうエルヴィンから離れることはできないのだ、と。
「はぁ……、大変なことになっちゃったな…」
「ふ、いいじゃないか。私は幸せだよ」
エルヴィンはベッドから起き上がれば、ナナバの手をとり浴室へと向かう。
温かな湯気が満ちるそこで、丁寧なキスと共にお互いを感じあう二人。
「ナナバ…、…ん、ちゅっ。ふっ、ん…」
「ん…、ちゅ、ふっ、はっ…、はぁ…、んっ」
シャワーの流れる音にはナナバの甘やかな吐息が混じり、それは不思議と掻き消されることなくエルヴィンの耳へと届く。
「…ん、はふ…ちゅっ。…エルヴィン…」
「ん…?」
「…その、………」
ありがとう
その一言が、どれだけエルヴィンの心を震わせたか。
ナナバはこの後、身をもって知ることとなる。
fin
「ふん、ふん、ふん♪」
「随分とご機嫌だね、ゲルガー」
「あぁ、ナナバか。見てくれよ!これ!」
「…また酒、ったく…」
「いやいや、これは正当な報酬だからな」
「報酬?」
「この間、団長からどっさり仕事頼まれてさ。んで翌日、『すまない、助かったよ』ってくれたんだよ。…なぁ、今の似てたか?」
「…!」
「あ、お前疑ってんな?何だったら聞いてみてくれ。嘘じゃねぇからさ」
「いや、ごめん。そっか…。お疲れ様、だね」
「???、お、おぅ…(素直に謝って労うとか、調子狂うな…)
「つまみは?何か用意してるの?」
「いや、ないけど」
「じゃ、少し待ってて。何でもいい?」
「あ、あぁ…」
(帰りがけ、エルヴィンが持ってたのはアレか…)
やはり、とんでもない人に捕まったのでは…?
ナナバの予感は、確信へと変わっていくのだった。
了