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まったりの向こう側

第1章 君の初めてで慰めて



「ナナバ」

「…っ、はい…!」

真剣な、その眼差し。

「私の、恋人に…なってはくれないか」

「……へ?」

「やはりダメか…。そうだな、こんな風になってしまっては…」

「違う!…その、なんていうか、嬉しい、よ?だから、…ん、その…。私で、いいの?」

「あぁ、君がいい。
 ナナバ…、君でなければ、だめなんだ」

受け入れられた、そう安堵したのも束の間。

「……ごめんなさい」

「!」

脈絡のない謝罪。

ナナバはひどく悲しそうな顔で、今にも泣き出さんばかりだ。

そんな様子の彼女に、エルヴィンの全身からは一瞬にして血の気が引いていく。

「……、ナナバ…」

「誘ってないんだ。……声、かけてないの」

「声…?」

「その…、一緒に食事にって、ゲルガーに、声かけてなくて」

エルヴィンと二人で、過ごしたかったから。

…その一言は、声にならなかった。

「んっ!ぅ、んん!ちゅ、…はっ、はぁ」

「…んっ、ちゅ、…はっ。君は、なんてことを…」

「っ、ごめん、なさい」

「違う。嬉しいんだ…。私と二人で過ごしたいと、そう思ってくれたんだろう?」

「…ん」

小さく頷いたナナバの首筋に、キスを一つ。

唇はその滑らかな肌から離れることなくゆっくりと降りていき、鎖骨までくるとしゃぶるように舐める。

「ちゅ、ん…、それに、…はぁ、ちゅ、君が気にする必要は、ない。んん、ちゅ」

「あっ…、やだ、くすぐったい、それっ、ん!んん!」

「ゲルガーは、書類に埋もれていなかったかな?」

「…え?あ、あぁ、うん、…そう、だった」

何故、今その話が…?
ナナバはわけが分からず、鎖骨に唇を当てたまま話すエルヴィンを間直に見つめる。

「私だ」

「…どういう、こと?」

「私が、彼に頼んだんだよ。今日中に終わらせたいが、如何せん量が…とね」

「!?」

「どちらにせよ、彼は来られなかった。…ふ。君の嘘とは、比べ物にならないだろう?」

ナナバはそっとエルヴィンの頬を撫でる。

「ね、これって…共犯?」

「そうだな。二人して怒られるか」

優しく視線を絡めれば、どちらからともなく口付けを交わす。

触れるだけのキス。
お互いの体温をほんの少し交換すれば、それ以上に心は暖かく満たされる。

そうして、初めての夜に…二人は寄り添い眠りについた。




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