第14章 たまにはいいだろ?
歩き出したエルヴィンに続いて厩舎を出る。
うん、やっぱりいいお天気。
でも、どうやって乗れば…
二人乗り、ましてやサイドサドルなんて初めて。一旦エルヴィンにバスケットを預けてそれから
「しっかり持ってて」
「ひゃっ?!」
いきなり腰を掴まれて、気付けば爪先は地面を離れて宙ぶらりん。そのままぽすっと鞍の上に。流石エルヴィン…力持ち。
ちょっとびっくりして何度か瞬きをしている間に流れるような身のこなしでエルヴィンも馬上へ。あ…ちょっとだけどきどきするのは初めてだから?それともこんなに近いせい?だって、左肩がすごくあたたかい。
「ナナバ」
「ん?」
横向きに景色を眺めるなんて初めて。
壁外とは違って危ないこともないから、流れる景色を楽しむ余裕もある。
それに何より、エルヴィンと一緒だから。
「笑ってる」
「そう、かな?うん、そうかも」
「お気に召していただけましたか?姫」
「ふふ、姫だなんて…
私そんな可愛くないよ」
「いや、可愛いよ」
「ん、エルヴィンがそう言うなら…
そういうことにしておこうかな」
なんとなくおかしくて、二人でくすくすと笑いあう。こんな時間が嬉しくて有り難くて。いつまでも続いてほしいって、そう願ってしまう。
ん、着いた?
結構来たけど…ここは…
実は何処に行こうかって話の時、エルヴィンに『任せてくれないか』って言われて何の気なしに頷いたら、着いてからのお楽しみになっちゃったんだ。だからここが何処なのか、分からない。因みに初めて来ました。
「広い」
「あぁ。公園と名がついているが…
実際は原っぱだね」
「そっか。
ね、エルヴィン、あの子いいの?」
何処にとめるでもなく放牧状態のエルヴィンの愛馬。鞍もはずしてもらって、心なしかすっきりした表情に見える。
「あぁ、大丈夫。
遠くに行かないよう言い聞かせたから」
そっか、なら安心。
ここまで大人二人を乗せてくるなんて大変だったに違いない。のんびり草をはむ姿に、お疲れ様。ゆっくりしてて。と自然と零れた。
「さて、ここでいいかな?」
「うん」
ピクニックシートを柔らかな芝生の上に広げ、二人並んで腰を下ろす。見渡す限り原っぱで、少し遠くにぽつぽつと木が生えてる。もっと奥に目を凝らすと、やっと生い茂る木々が見えた。