第13章 たまにはいいでしょ?
ぱちっという聞き慣れた音に、ゆっくりと蓋が上がっていっては今の時間をやっと知ることができた。
「………」
「エルヴィン」
「……ごめん」
正確に動く秒針。
5と6の間を指している長針。
短針は…12の右隣に。
寝坊、なんて可愛いものじゃない。完全に寝過ごしている。何てことだ……
「本当に、ごめん…」
「気にしないで」
「…もう、今からじゃ…間に合わない…
ごめん…」
「謝らないで」
こんな時間まで寝こけていた俺を責めたりしない。それどころかずっと側で見ていてくれた。きっと俺を気遣って起こさないでいてくれたんだね。君は何て優しいんだ。
だから余計に申し訳ない。せっかくの休みだというのに半日無駄にさせてしまった。それだけじゃない、昼食だってそうだ、きっと早起きして用意してくれたんだろ?約束した日に『何が食べたい?』と聞いてくれたから俺の好物を沢山用意してくれたんだろ?
「…ごめん…」
「もう…」
手のひらの時計をパッととりあげ、机の定位置に。
あぁ、そんなことも知っていたのか。本当に君は凄いな。俺のことは何でも知っている。
「エルヴィン、こっち」
思いの外力強く腕を引かれる。俺はたたらを踏むように振り返りながら数歩前へ。そして間髪いれずに突き飛ばされる。
「っ?」
「謝った分、お仕置きだよ」
馬乗り。
ベッドに転がる俺に、馬乗り。
ナナバにしては珍しく強引だったな、あんなに力一杯突飛ばすなんて。と何故か冷静に思い返す。
「!!!」
なんてことを驚きと疑問符が浮かぶ頭で考えていたら、不意打ちのキス。
「ぅん、ちゅう、んっ…」
何をしてるんだ?遠乗りは?ほら、バスケットを持って…といろいろ聞きたいことや言いたいことが頭を埋め尽くすも口を塞がれていてはそれをナナバに伝えることはできない。
「ん、ナナバ」
「だーめ。んっ、ちゅ」
だからせめて彼女を抱き締めたくて腕を伸ばす。が、やんわりと止められてしまった。
それどころかいつの間にか外されていたベルトで両手首を拘束される。初めてだよ、こんなこと。いやこんなプレイがあるのは知っていたが実際自分がそうなってみると…実に興奮する。