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まったりの向こう側

第13章 たまにはいいでしょ?



「エルヴィン。
 いいんだよ、好きなだけ寝てて」

「…?」

そう言っては微笑み立ち上がる。うん、いつ見ても長い。モデルや役者も務まるに違いない。だからといってやりたいと言っても俺が許さないけどね。だってわざわざ他の男に見せる必要なんてない。俺にだけ見せてくれればいいのだから。

そういえばいつだったか、長いと褒めたら『それは分からないけど、太い気がするんだ』と気にしていたな。確かに俗にいう"細い"には当てはまらないだろう。まぁ要するに、一般的な女性に比べると筋肉がついているということ。だがそれは調査兵としては至極当たり前のことだ。むしろ好ましくある。毎日の鍛練の賜物だからね。俺としてはとてもバランスよく鍛え上げられていると思うよ。俺好みのバランスでね?

だからつい想像してしまう。あの脚で蹴られたらさぞかし…

まずい、朝からは流石にいただけないな。
そう、朝はだめだ、流石に。

「…あの、エルヴィン…」

「ん?」

まずい、あれこれ想像(というより夜の予定を立てるといった方が近い気もするが)していたのがバレたか…?

「まだ眠い?
 …もう起きる?」

君が立っているのは机の前。ん?何か置いてあるね。何だろう、バスケット…?どうして隠すんだい?背に隠そうとしても君は細いから、どうしても見えてしま

「あ!」

「どうかした?」

「ごめん!!」

今日は休日。
次の休みに遠乗りに行こうと約束していた、その当日が今日。

「本当にごめん!直ぐに着替えるよ。
 すまないが先に降りていてくれないか」

急いでクローゼットを開ける。あれ、シャツはどこだったか…落ち着け。バスケット、そうバスケットだ。俺が持っていかなくちゃ。中身はきっと二人分の昼食だ。重いだろ?だから俺が持っていくよ。君はハンカチだけ持って行って。あぁ、日射しがあると困るから帽子とカーディガンも忘れずにね。

「本当にすまない、まさかこんな…」

こんな日に限って、寝坊するなんて。
そもそも君が部屋に入ってきていることに気付かなかった。何たる失態。気が緩んでいる証拠だな。

「ごめん、お待たせ」

「大丈夫だよ。
 それよりエルヴィン、落ち着いて。
 ほらボタン」

「っ、あぁ、ごめん、有り難う」

情けない。
ボタンすらまともにとめられない。

…あんなに近くにいた君に、気付けない。
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