第12章 オアシス
ゆっくりと体を起こし、名残惜しそうにソコを見詰めるのは来訪者の尋ね人。
「は、はぁ、…んん…」
乱れる呼吸はそのままに、エルヴィンは顎まで垂れるソレを指先で拭い口へと運ぶ。
「…あまい…」
ちゅ、と鳴らしながら、しゃぶるように舐めるのは一番長い中指の腹。
「エルヴィン、こっち向いて」
ナナバは優しく、労るように、手と口元を拭ってやる。
まるで母のように。
「勿体ないよ…」
「でも今はだめ。また後で、ね?」
「うん」
エルヴィンも大人しくされるがまま。
まるで子供のように。
「はい、これでよし。ご用件は?」
暗闇に沈む彼女を横目で捉えながら、ナナバはエルヴィンの頬を撫でる。
エルヴィンもまた、ナナバの鎖骨を指先で辿りながら、同じく横目で彼女を捉える。
「何か問題が…?
ああ、申し訳ない、
誰か粗相でもしましたか?」
堅く、踏み込むことを許さない、閉ざされた門を思わせる声色。
それはいつも通りの、聞きなれない者にとっては身震いしてしまうような…完全に"調査兵団団長"の声だった。