第12章 オアシス
「ぁ…」
一体、今、自分の目の前で何が起こっている?
いや、そんなこと考えなくても分かる。
来訪者である彼女は、瞬時にその体を硬直させた。
「…ぁ、の……」
真っ暗な部屋の中、きっと視界の大部分を占めているのはキングサイズの豪奢なベッド。
きっと、というのはそれを確めることが出来ないから。
部屋の明かりはおろか、窓には分厚いカーテンがひかれ、月も星も、その光がこの場所を照らすことはない。
それでも、分かる。
目をこらさなくとも、不思議と見える。
暗闇の中、ベッドの上、不自然に繋がった一つの影が艶かしく蠢く様が。
「…あ、もう、エル、ヴィン…
きっと急用、なんだろうから…、んっ!」
そして、喘ぎながら諌める女の声と
「ん、ちゅ、……ごくっ
…まだまだ足りない、もっと…」
ナニカを啜り、飲み下してはまた啜る、そんな男の荒い息遣いが彼女の脳に直接響く。
「ぁ、なに、を……」
「ん、ごめんなさい。
ちょっと夢中に、なってるみたい…」
「ナナバ、今日もすごく美味しいよ」
「ふふ、そう?ありがとう。
でもそろそろお終い…
ほら、良い子だから、ね?」