第12章 オアシス
「ん…」
「あ、…あ、ぁ… ふっ、ん……」
じゅる
と、聞こえたかと思えば
ごくり
と、続けて鼓膜を打つ
「あぁ、いい……
ナナバ、たくさんちょうだい?」
「……」
「だめ…?」
「くす。エルヴィン、甘えん坊さんになっちゃったの?…いいよ、たくさんあげる」
「ナナバ… …ちゅぅ…」
「あ、んん…、くすぐったい…」
「!」
(今、ノックが……)
控え目すぎて聞こえなかったのだろうか?
エルヴィンは尚も変わらず、喉の乾きを潤している。
(………)
ゆっくりと体を起こし、足の間に顔を埋めるエルヴィンの髪に指を滑らせる。
(相変わらず、さらさら)
癖のない髪質は、少々羨ましい。
だが、ふわりとボリュームをだすナナバの髪を、エルヴィンは好きだと言った。
(エルヴィン……)
「どうぞ」
凛とした声に続き、遠慮がちに押し開けられる扉。
「あの、こんばんは」
「こんばんは。
…っ、エルヴィン、お客様…だよ」
「…、…ん……」
今度はきちんと聞こえいる。
だが、聞こえているだけで、余程夢中になっているせいか、顔を上げる気配がない。
「…ちゅぅ…」
「ぁ!……はぁ…
っ、ほら、ちゃんと、して…」
「?!」