第12章 オアシス
用意された部屋につくと、それぞれの目的を果たすべく
ナナバは一角に設えられた木製の衝立の向こうへと姿を消し、
エルヴィンはベッドに腰かけ、サイドテーブルにある水差しを手に取る。
(アルコールだけでは、流石に辛い)
エルヴィンは喉の乾きを潤すために。
「エルヴィン、ドレスありがとう。
こっちもすごく素敵だよ」
微かに聞こえる衣擦れの音。
ナナバは半日以上着続けたドレスを着替えるために。
「どういたしまして。アクセサリーもドレスも君のための物だからね、気に入って貰えたようでなによりだ」
「……」
「ナナバ?」
「エルヴィン…
さっきの人、すごく綺麗だったね」
「……、そうかな…?」
「そうだよ。
それに彼女だけじゃない
皆華やかで、いい匂いもしてた」
とぽとぽ、と聞こえるのは、グラスに水が注がれる音。
「ミケだったら、
鼻がどうにかなっていただろうな」
『香水、付けすぎだと思わないか?』
苦笑混じりに言うエルヴィンは、そんな人達には全く興味がないらしい。
だが、あの人達は…
明らかな"欲"を纏わせた視線でもって、エルヴィンをみていた。