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まったりの向こう側

第10章 ありふれた日常を



エルヴィンは驚き顔を上げた。

その瞳の真ん中には、変わらず小さく丸まった背中が映し出される。



「…」
  
「おい、本当に嫌いか?」

「……」

「お前を好きなエルヴィンを…嫌いか?」

「…っ…」



「俺は、今のお前は嫌いだ」



ストレートに。

その年齢を片手で数えられる程の彼女には、余りに残酷な一言。

だが…



「今のお前じゃ、明日から遊んでやれない」



リヴァイは容赦しない。

…例えどんなに幼くとも、一人の人間として接しているから。





「…かくれんぼは?」

「しない」

涙が一粒。





「…おえかきは?」

「描かない」

更にひとつ。





「…ピクニックは?」

「行かない」

とうとう、堪えていた涙がこぼれ落ちる。

それはまるで繋がっているかのように。途切れることなく、次々と頬を伝い落ちていく。





「…リヴァイ、あまり意地悪しないでやってくれ」

言葉とは裏腹に、その声音は責めることなどなく。
むしろ自身を戒めているかのようで。



「すまなかった。決して君が嫌いなわけでも、リヴァイが嫌いなわけでもない。それだけは信じてほしい」

思わず慌てただけ。

きっと、娘を持つ父親なら誰もが通るであろう、そんな瞬間だっただけ。



「好き同士、納得するまで話し合え」


言うが早いか、立ち上がったエルヴィンの胸へと押し付けるように渡し、そのままリヴァイは振り返らずに部屋を出ていってしまった。



「…りばい…」



「すまなかった。きちんと君の話を聞いてあげられなかった私が悪い。本当にごめん」

「…パパ…」

「ほら、君の言いたいこと、言ってごらん?」



「パパ、ごめんなさい…」


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