第10章 ありふれた日常を
「ミケとカリンの息子と、結婚させる!」
エルヴィンが椅子から立ち上がり高く抱き上げれば、以外にもリヴァイからは『ライオ○キング…』との呟きが。
「え、…はい?」
何を言い出すかこのオジサンは、という表情の母親。
「………」
眉間にお馴染みの皺を幾つも刻み、上官を凝視する兵士長の彼。
「けっこん…?」
言葉の意味が分からず、ポカンとする幼女。
三者三様の反応が、エルヴィンへと向けられている。
が、各々、それ以上の反応はない。
いや、反応のしようがない。
何しろいきなりすぎるし、相手側の許可等得ていないのは勿論。そもそも未成年にも程がある年齢だ。
だがエルヴィンは自信にあふれた表情で、その場でくるくると回り始めた。愛娘を高く掲げたまま。
「結婚というのはね、お嫁さんになる、という事だよ。いつも言っているだろう?」
「…!うん!」
女児特有の『将来なりたいもの、お嫁さん!』を、例に漏れずこの可愛らしい幼子も日々口にしているらしい。
「お姫様みたいな真っ白のドレスを着て…
ママと同じお嫁さんになるんだよね?」
「うん!およめさん!」
「うんうん、そうだよ」
「りばいのおよめさん!」
「うんうん、そうだよ。
りば、
……………………ほぁ?」
今、この瞬間、時が止まった。