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まったりの向こう側

第10章 ありふれた日常を


当然、仕事が終われば家に帰る。三人で暮らす小さな一軒家へ。

だが、それが分かっていたとて、そこは子供。

余程会いたかったのだろう、とうとう膝立ちになり、首筋にぎゅうと抱きついては何度も何度も呼んでいる。


「パパ……、パパっ…!」

「大丈夫、ここにいるよ。
 …よく来てくれたね」



ふと、エルヴィンの耳に微かなため息が聞こえた。

そのため息の主は、しっかりと抱き合う二人を眉尻を下げて見つめるナナバ。



(……真面目すぎるのも困ったものだ)

「ナナバ」

「っ、何?」

「あまり気にしてはいけないよ。
 ……正解など無いのだから」

「!!」

「ところで、君が居ない間はリヴァイに見てもらっていたのか?」

「あ、うん。そう。
 かくれんぼに付き合ってくれてて」

「そうか。楽しかったかい?」

「うん!」

「リヴァイ、今日もすまなかった。
 ありがとう」

「気にするな。適当にツケといてやるよ」



「…っといけない、忘れるところだった」

「あぁ、頼む」


たったこれだけのやりとりで、ナナバがここに来た理由を察するエルヴィン。





「無事産まれたよ。母子ともに良好だ」

「そうか、それは良かった…
 まずはおめでとうと伝えてくれ。
 落ち着いた頃に、また直接」

「…どっちだ」

「男の子」

「ほぅ」

「ちょこっと会わせてもらったんだけどね、
 母親似ですごく可愛い」

「ふむ、美少年…将来的には美青年かな?
 これで身長が父親譲りなら、間違いないな。
 ……!そうだ!」


何事かひらめいたエルヴィンは、愛娘のまるっとした可愛らしいおでこにキスを落とす。



「うんうん。
 これでこの子の将来も安泰だぞ」

「どうしたの?
 とっても嬉しそうだね、"パパ"?」




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