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まったりの向こう側

第8章 1014



まだ少し、冷たい気がして。

ううん、それだけじゃない。
この期に及んでまだ、私でいいのか、そう思って勝手に不安になる。



絡めた指、エルヴィンも同じようにしてくれた。



いいんだよね?
私で、いいんだよね…?



指先から、
寄りかかる肩から、
座る膝の上から……

エルヴィンの温もりが伝わってきて。



あ…

おでこにキス、されちゃった…



ちょっとだけ、くすぐったい。
でも、それ以上に嬉しい。



「ふふ」



ね、気付いてる?

多分…ううん、絶対気付いてるよね。

触れ合う指先…もう、冷たさを感じない。



「エルヴィン」



「うん?」



ちゅ



「!!」



「もう大丈夫。ありがとう」



「そうか…いや、その……」



ふふ、顔、赤くなってる。

最近気付いたんだ、エルヴィンは不意打ちに弱いって。
とはいっても、恥ずかしいからそう滅多にできないんだけどね。



軽く上半身を捻って、机に向かう。
当然エルヴィンの膝からは降りない。
勿体無いから。



「このペン、いつも使ってるね」



「あぁ、とても書きやすいんだ。
 今度色違いで君にプレゼントしよう」



「ほんと?ありがと。
 事務仕事が捗りそうだよ」



本当だ、すごく書きやすい。
おかげで書き損じもなくサイン完了。

ペンだけじゃなくて、一番はエルヴィンがあたためてくれたお陰…だけどね。

だってほら、ちゃんと喋れてるよ。



「これで大丈夫かな?」



「…あぁ、完璧だ」















「ありがとう、俺の可愛い奥さん」



「どういたしまして、私のかっこいい旦那様」





目があった瞬間、同時に笑っちゃった。
だって、なんだか不思議で。



「まさか、自分がこれにサインする日がくるなんて、ウソみたい」



「それは俺も同じだよ。
 でも、嘘でもなければ夢でもない」



そうだね、だって、こんなに温かい。
くっついているからだけじゃない。なんだろう、心が温かいってこういうこと、なのかな。



でも、これだけじゃ…足りない。





だから、エルヴィンにお願い。

今ならいいよね?

だってもう、私は…




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