第7章 怪しいお薬
(えっと)
(次は……)
(エルヴィンにキスして、それから)
改めてその"方法"を思い返すと共に、今の状況を整理する。
そうすれば当然、自分がエルヴィンにキスしていることを自覚するわけで。
(!!!)
(は、恥ずかしい!やっぱり恥ずかしい…!)
かといって、ここまで来てやめることは出来ない。
(次、次)
(次、は……どうするんだっけ…?)
恥ずかしさのあまりに、完全に頭は真っ白。
全て飛んでしまっている。
(まずい、何も思いだせない…どうしよう!)
気付かぬ内に冷や汗一つ流れそうになったところで、両の手の甲がほんのりと暖かくなる。
(あ…)
いつの間にか、エルヴィンの大きな手が包みこむ様にして重ねられていた。
まるで『大丈夫だよ』と、そう言っているかのように。
(……うん、大丈夫。大丈夫)
微かに動いた唇は、ナナバの言葉をエルヴィンに伝える。
淀みなく、真っ直ぐに。
嘘偽りなく。
「……もういいよ」
「ぁ…、今、の、は…」
驚き、目を見開くエルヴィンのその表情は、まるで何か始めてのことに触れた少年のようで。
きっと、いや、間違いなく伝わっている。
なにしろ目の前のエルヴィンは真っ赤な顔で放心しかけているから。
何があったか、ナナバが何をしたか、理解している証拠だ。
(ちょっと、可愛い…)
そう思えば、ナナバの中にあった恥ずかしさは安堵へとその姿を変えていく。
「…あ、…その…」
「これ、ちゃんと食べてね」
『自信作だよ』
そう言いながらバスケットの持ち手を指先でなぞり、ナナバはくるりと背を向ける。