第7章 怪しいお薬
「っ!」
自分でしておきながら、やはり恥ずかしさが勝ったのだろう。
驚き、目を見開くエルヴィンと目があった瞬間、ナナバはぱっと視線を逸らしてしまった。
その顔はいつも通りに真っ赤になっている。
「…エルヴィン。目、閉じてて」
視線を逸らしたまま、ナナバはエルヴィンへと"お願い"をする。
「目…?」
エルヴィンはと言えば、何をするのかと窺う雰囲気と、何をしてくれるのかと期待する雰囲気が、その声色に僅かに混じる。
いっそこのままやってしまおうか、でも、見られていたら恥ずかしい…
そう変に冷静になったナナバは、確認も含め、やっとの思いでエルヴィンと視線をあわせる。
(やっぱり、見てる……)
「……閉じてて、ね。お願い」
「あぁ…これでいい?」
「いいって言うまであけちゃだめだから」
「分かった」
こう言っては失礼だが、何かからかうような事を言われるんじゃないかと、頭のどこかでナナバは構えていた。
だがエルヴィンからそんな言葉は一切出ず、むしろ驚く程素直に、言われるがままに、目を閉じてくれた。
(ありがと、エルヴィン)
(よし……)
(大丈夫、見えてない。私からも、見えなくなる)
ナナバの鼻先が、ほんの少し近付く。
「!!!」
驚いたエルヴィンが、思わず目を見開けば、その視界にはぎゅっと目を閉じたナナバの顔。
(あぁ、だめだ…目を閉じていなければ)
その唇には、ナナバの唇。
視界を遮れば、遮った分だけ、他に意識がいく。
(あたたかい。なんて心地いい…)
(今、ナナバと俺は…)
今、二人の距離は、ゼロ。