第7章 怪しいお薬
「どう恥ずかしいか、具体的に聞いてもいい?」
ハンジは手近にあった紙をひっくり返すと、前のめりでペンを握る。
「分隊長!それは提出用の書類です!」
「え、そうだっけ?まぁいいじゃないの」
また書き直し…と項垂れるモブリットには構わず、まっさらなそこに何本か線を引く。
「声に出すのは、ちょっと…」
「ふむふむ」
「目を合わせても、ちょっと…」
「ふむふむ」
声に出さず、目を合わせず。
「「「………」」」
「ごめん無理だよね。だめだめばかりで…」
「いや、う~ん…
条件を満たすとなると、手紙かなぁ」
「それなら確かに。
形にも残っていいかもしれませんね」
「…額に入れられたりしそうで、ちょっと…」
あぁ~やりそう…
という雰囲気がどこからか滲み出し、3人を包む。
「あ」
「ん?モブリット何かある?」
「確か…団長は読唇術が出来ると」
「あぁ~
なんかちょろっと聞いたことあるかも」
「どく、しん、じゅつ…」
唇の動きから何を喋っているか読み取る技術。使う機会があるかは別として、出来て損はない。
この方法ならば、声に出さずにエルヴィンに伝える事ができるのでは?そう提案するモブリット。
「でもこれだと、目を合わせてになるか…
うーん、難しいなぁ…」
「ごめんね、二人とも…」
「あ
あぁーーー!!!
待って!いい事思いついた!」
(テンション高っ!大丈夫かな…一応聞いてみるけど)
「分隊長、どのような?」
「ふっふっふ…私ってば冴えてる!
よく見てて!」
ハンジは紙の余白に勢いよく書きなぐる。
次々と生み出される文字はまるで踊っているかのようで、かなり個性的。古参の二人でなければ読めなかったかもしれない。
「…ぃよっし!完璧だ!!!」
「これ…」
「随分と、その、大胆ですね?」
「どう?これならどっちもクリアできる」
「……」
「ナナバ、君は『だめだめ』と言ったけど、だめじゃない。今ここに、こうして相談に来てくれた。それって一歩踏み出したからだよ」
「団長の為に、ですね」
「!!」
「無理にとは言わない。でも、今の君ならもう一歩踏み出せると思うんだ…どう?」
「…うん、頑張ってみる」