第7章 怪しいお薬
後日談 弐 ***勇気を出して***
「はぁ……」
あの騒動以来、ほんの少し、またエルヴィンとの距離が縮まった気がする。
それなのに、未だ燻るあの一言。
(疑うわけじゃ、ないんだけどね)
そう、エルヴィンを疑っている訳じゃない。
しかしこうも気になってしまうのは…
(やっぱり、一度は言わなきゃ…だってエルヴィンはいつも言ってくれるんだから)
(……………)
(あぁ…でもやっぱり恥ずかしい…!)
思いきりベッドにダイブし、枕に顔面をぐりぐりと押し付ける。
『ナナバって、エルヴィンの事…大好きなんだね』
ハンジに耳打ちされたこの一言。
「うん、そう」
思い返す度に勝手に口が動き、肯定と言い訳を繰り返す。
(そうなんだけど……)
「…はぁ…」
好き
この二文字を、この二音を、口にして伝える事が出来ない。
恥ずかしい?
(…恥ずかしい。何でかな、好きなのにね)
たった二文字でしょ?
(そうなんだけど…でも…)
…もしかして、本当は好きじゃないんじゃないの?
(それはない!それだけは、ない。でも周りからはそう見えてるのかな)
そんな事を言われてしまいそうで、誰かに相談することも躊躇われる。
「はぁ……」
(……ん?)
いや、相談は誰にもしていないが、事の仔細を知る人物ならば、
「いた……」
ほんの少し冷静になったナナバは、窓の外を一瞥する。
(時間はまだ大丈夫、かな)
(…もしダメだったら…
ううん、違う。ダメかどうかは)
行動してみないと分からない。
ナナバは急ぎ目的の場所へと向かうべく、枕とベッドと前髪を整え部屋を後にした。