第1章 君の初めてで慰めて
「…また、呼んでくれたな」
エルヴィンの柔らかな声音に、ナナバがぴくりと反応を示す。
「嬉しいよ。それなのに…二度も泣かせてしまった。本当にすまない」
涙もひっこんだのか、もぞもぞと動く白い塊。と、そこからくぐもった声が聞こえてくる。
「その、最初のあれは…なんていうか…」
「ん?」
「魅力的な女性、なんて言われたことがなくて、その…どうしたらいいか分からなくて」
女性扱いに免疫が無い。
こういったことに免疫が無い。
だから、どう反応したらいいかわからない…
今は、ただただ恥ずかしい。
シーツから顔を出すと、ナナバは遠慮がちにエルヴィンの胸元に手を添える。
「…っ、その」
ごめん、そう小さく呟いた彼女の手にエルヴィンはそっと自身の手を重ねた。
「謝る事なんて何もない。心配しなくていいよ、大丈夫だ」
「エルヴィン、優しすぎない…?誰にでもそうなの?」
「違う。君だからだよ…君を、君の初めてを、大事にしたい。ただそれだけだ」
「はじ、めて」
「あぁ、そうだ。君の初めてだよ」
そう優しく言うと、エルヴィンはシーツをそっと滑らせていく。肩から腰、腰から足首、ナナバの全てが露になれば、うっとりと目を細め僅かに口角を上げる。
「やっぱり…綺麗だね」
「…エルヴィン、エルヴィンは!?そのまま!?」
「すまない、つい見とれてしまっていた。少し待っていてくれ。出来れば…」
そのまま見ていてほしい。
そう言えば、ナナバを跨ぐ形でベッドへ膝立ちになり、襟元を寛げる。
「ま、待って、ここじゃなくて、下で…!」
「ふむ、そうか…残念だが。…っと」
ベッドから降りると、エルヴィンはナナバを見つめたままでシャツのボタンに手をかけた。
「なんで、こっち…後ろ、後ろ向いて…!見ないで!」
「わかった、私は見ないよ」
そう言いながらエルヴィンはゆっくりと背を向ける。
「その代わりに、君には見ていてほしい。いいかい?」
ゆっくりと、シャツから順番に脱いでいく。最後に下着に手を掛ければ、背後でナナバが息を呑むのがわかった。
「期待してくれているのかな…?」
「なっ…変態っ」
ぼすっという音とともに、ナナバが背を向けた。
やれやれ、随分と恥ずかしがりやだな…。そう口の中だけで呟き、すべて脱ぎきったエルヴィンは彼女の隣へと横になる。