第1章 君の初めてで慰めて
「…はっ」
ようやく伝わったのか、エルヴィンはゆっくりと唇を離す。
「っ、…はぁ、はぁっ!…はぁ、っは。
な、んでっ、はぁ、いきな、り」
「言っただろう?こういうことだよ。
…もう、容赦はしない。覚悟してくれ」
エルヴィンはナナバを抱き上げると、そのままベッドへと歩を進める。
その瞳に欲情の色をありありと浮かべ、だが限りなく丁寧に横たえると、覆いかぶさるように抱きしめた。
「あ、待って、お願い!」
「待てないよ」
エルヴィンは忙しなく彼女の服に手をかけ、次々と脱がせていく。
…脱がせながらも、その肌を撫で、唇を落とし、赤い跡を散らせ、気付けばナナバの全てが露になる。
「ん…、…ちゅっ。どこもかしこも、滑らかな…」
「待って、お願い、だから…、んん!っ、あ、んっ」
「それに、とても綺麗だ。これは、癖になるな…、ふっ、ん…、ちゅ」
「だ、め…、本当に…、だめ!!!」
ぱちん!
ナナバの首筋から顔を上げたと同時に鋭い音が響き、エルヴィンの両頬が一瞬にして熱を持つ。
…その頬には、包み込むように添えられた彼女の手が。頬を叩かれたと気づいたのは、一拍の後。
「お願い、待って。どうしても聞いてほしい事があるから!」
「っ、すまない」
真剣な眼差しに、エルヴィンも動きを止める。
そんな彼の首に、そっと腕を回しては睫を伏せるナナバ。
「…その、聞いてほしい事、とは?」
唇を引き結ぶ彼女に向けて、恐る恐る尋ねるエルヴィン。
彼の目の前、ナナバの薄く色づいた唇から小さなため息が漏れれば、数度、何かを言いかけては噤む。
暫し、無言で抱き合う二人。
「……、……私」
すぅ、と息を吸い込む。
「……したことないから!」
目を開き、語気を強め、半ば自棄とも思われる声音で告げる。
一体どんなことを言われるのかと構えていたエルヴィンは、その可愛らしい告白に一気に脱力した。
「なんだ、そんなことか…」
「なんだって、なに…そんなことって、なに!」
ナナバの瞳に、見る間に涙が溢れてくる。
「…っ、これでも、気にして」
「っ!すまない、馬鹿にしたわけではないんだ」
「もう、しらない…エルヴィンなんて!
…ひく、ん、…ぐすっ」
シーツを無理やり引き寄せ頭まですっぽりと包まれば、小さくすすり泣く声が聞こえてくる。