第7章 怪しいお薬
「!?」
キス、されている。
だがそう思う間もなく、何かが口の中に押し入れられた。そして"ソレ"を追うようにしてエルヴィンの舌も入ってくる。
「…ぅ、んっ…ん」
大きくて、丸くて、甘い……
「んぅ!?」
葡萄だ、と気付けたのはよかった。ただそれ以上どうすることも出来ない。
エルヴィンはナナバをしっかりと抱き寄せ、あまつさえその大きな手で後頭部を包み込むようにして支えている。
抱きしめられているナナバは、逃げ場がない。
出来る事といえば…エルヴィンの胸元、自身が流した涙で濡れるシャツをぎゅっと握りしめキスを受け続けることだけ。
「んん…」
「……ん」
そんな二人の口内では、葡萄の粒が行ったり来たりを繰り返す。
いくらかそうしているうちに、転がされ柔らかくなったソレがその形を徐々に徐々に崩れさせていく。
「ぅん、…ん、……ごく」
「美味しい?」
「っはぁ………、馬鹿!変態!」
無意識に、乱暴に口許を拭うナナバ。
その姿を満足気に眺めるエルヴィン。
「ナナバ」
「っ、…何?」
「俺にも食べさせて」
「………何が、いいの…」
「さくらんぼ。それから、桃」
「……、…どっちもないけど…」
また取りに行く気だろうか?
いやそれよりも、そんなに沢山の果物があったか?季節的にはどうだ?何だか節操がないような…
「ほら、ここにある」
そう言って触れたのはナナバの胸。
「という訳で、だ。
今から君を抱こうと思う」
「………は?」
胸を触られているが、その顔には怒りではなく見るからに『意味が分からない』という表情が浮かんでいる。
当然だろう。
何しろ『果物が食べたい』から『シたい』まで突然話がすっ飛んだのだ。
「………」
「伝わっていないのか?困ったな…
つまり、今から君とSe「言わなくていい」
はぁ……、と盛大なため息が部屋に満ちた。
(何でソッチにいくわけ…
エルヴィンも薬飲んでるんじゃ)
そこまで考えて、一つの疑問が湧いてきた。
「もしかして、さっきの…気付いて…」